ヘッドライトを付けたバイク

夜間走行時のバイク運転テクニック

夜間装備と視認性を高める準備

夜の道路では「見える」より先に「見てもらう」ことが事故回避の鍵になります。ライダー側の準備としては、まずヘッドライトの光軸調整を日中に済ませ、ロービームで前方40m、ハイビームで100m先を正確に照らせる角度に合わせておくことが大切です。純正ハロゲンからLEDへ換装している場合、光が集光し過ぎて照射範囲が狭くなることがあるため、壁に光を当てカットラインの段差が左右均等か確認しましょう。

ウェアは黒基調でも構いませんが、胸元・前腕・足首など動きの大きい部位に反射素材を配置するとドライバーの視覚に残像が生まれ、存在感が格段に上がります。リヤの視認性を支えるテール&ブレーキランプは、夜に点灯させると光量低下が意外と分かりにくいため、発色がくすんでいないかスマートフォンで動画撮影し発光の強弱を客観的に確認すると劣化を早期に発見できます。

雨粒や虫の汚れが付いたシールドはライトが乱反射し、対向車のライトを浴びた瞬間に前方が白く霞みます。走行前に中性洗剤を含ませたマイクロファイバークロスで汚れを浮かせ、最後に親水コートを薄く塗ると、水滴が膜状になり視界を奪いません。さらにタイヤ空気圧を指定値より5%上げ、路面温度が下がっても適正荷重が確保できるように調整しておくと、コーナリング中の変形が安定しライントレースが容易になります。

暗闇ならではの潜む危険を読む走り

夜間はドライバーの視野が狭まり、状況判断が昼間より遅れがちです。バイク側から危険を探しに行く意識で、街灯の切れ目や木陰に潜む動物、脇道からの合流車を常に想定しましょう。

ハイビームは対向車が見えた時点でロービームへ切り替えますが、光量が落ちる瞬間に目が暗順応せず危険を察知しにくくなるため、同時にわずかに減速し路肩との距離を広げておくとリスクを吸収できます。特に郊外の片側一車線では、対向車のヘッドライトが自車のライトを打ち消し路面の凹凸を隠してしまうため、車線中心よりやや左側を保つとハイライトが直接視界に入らず路面が認識しやすくなります。

温度が下がる深夜帯は路面の露がタイヤのグリップ低下を招きます。コーナー進入前に十分減速し、バンク角が深くなる手前でスロットルを一定に保ち、荷重をタイヤ外周へ均一にかけ直すイメージで旋回するとスリップを抑制できます。橋梁やトンネル出口付近は風で湿気が飛ばされるため一見ドライですが、気温差で結露した金属ジョイントが滑りやすく、進入角度を浅くすると踏み抜きを防げます。前走車のテールライトが路面に映る帯をヒントに、油膜や水たまりの位置を早めに把握し、リアブレーキで姿勢を整えつつラインを微修正すれば、安全マージンに余裕を持たせられます。

疲労と焦りを抑える夜間ライダーの心構え

夜間走行は視覚情報が減るぶん、知らず知らずのうちに集中力を消耗します。1時間ごとにサービスエリアで停車し、ヘルメットを脱いで首と肩のストレッチを行うだけで血流が戻り、視線移動が滑らかになります。暗闇は速度感が希薄になり高揚感が得づらい一方で、到着を急ぐ気持ちだけが先行しやすいものです。
走行前に平均巡航速度と到着予定時刻をあらかじめ設定し、時計を見て焦りを感じてもペースを上げない“セルフリミッター”として機能させると、無意識の加速を防げます。

また、夜間はトンネルの出入口で気温が急変し、シールド内側が曇って慌てるケースが多発します。曇り止めインナーシートを貼り付けておけば予防できますが、貼っていない場合でも口元を開け気味にして呼気を遠ざけるだけで短時間なら凌げます。

疲労が蓄積すると路面のギャップやヘッドライトの揺れが必要以上に恐怖心を煽ります。そんなときはステップに均等に荷重をかけ、膝でタンクを抱え込む基本姿勢に立ち返ることで車体の動きを受け止めやすくなり、余計な緊張が解けます。視線を遠くに置き、ヘルメットの中で深呼吸を繰り返すことが、長い夜道でも穏やかな心で走り切る秘訣です。