すり抜けを安全に行う判断基準とマナー
すり抜けは渋滞中の機動力を活かせる手段ですが、一歩間違えば重大事故につながります。まず、「車線幅」「周囲車両の動き」「自車の幅とハンドル形状」をもとに、定量的な判断を行いましょう。
二輪が通れる余裕は片側20cm以上が目安です。ただし、路面の白線上に砂がたまっていたり、排水溝のスリットが見えたりする場合は即座に見送り、車間が再び広がるポイントを待つのが賢明です。前走車のバックミラーに自車のライトが映る位置を保つと、ドライバーの視界に入りやすくなり、幅寄せのリスクも下がります。ウインカーは小刻みに点滅させるより、早めの操作で意図を示すとスマートです。クラクションの代わりに短くパッシングを使えば、音よりも穏やかに存在を伝えられます。
大型車の左側すり抜けは死角が多く、巻き込みの危険が高いため、右側からの通過を徹底しましょう。停止線の手前で前方へ出る際は、横断する歩行者や自転車に細心の注意を払う必要があります。信号が青に変わる直前でも、左右の安全確認を怠らず、慎重に発進することが重要です。
低速でもフラつかない車体コントロール術
渋滞路では、10km/h以下の極低速でもバランスを保てる操作が求められます。クラッチ操作は、半クラのストロークをやや長めに意識し、つなぐ瞬間に腰を少し前へ移動させると慣性が加わり安定感が増します。右手はスロットルをやや開けた状態で固定し、速度調整はリアブレーキを主体に切り替えると、前のめりにならず直進性が高まります。
ハンドルは大きく切らず、股関節と上半身のひねりを使って車体をイン側へ傾けましょう。視線は曲がりたい方向の遠方に置くことで、自然とスムーズな蛇行ラインが描けます。
ステップ荷重は外足の親指付け根に重点を置き、ヒザで軽くタンクを挟むと上体が固定されすぎず、車のドアが突然開いてもリーンアウトで回避しやすくなります。ラジエーターの熱でクラッチワイヤーが乾き、半クラの位置が変わることもあります。違和感があればすぐに路肩に寄せ、アジャスターで遊びを調整すると快適な操作感が維持できます。
心身のストレスを減らす渋滞ライドの工夫
渋滞が長引くと熱や排気ガスで集中力が削られ、些細なことに苛立ちやすくなります。体温上昇を抑えるには、メッシュジャケットのインナーに冷感素材を重ね、首筋には保冷剤を入れたバンダナを巻くと効果的です。
ミラー越しの車列が生む閉塞感は、意識的に視線を高架やビルの縁など遠方に向けることで緩和できます。目の焦点距離を変えるだけでも疲労が分散され、リフレッシュにつながります。
足元の不快感は、シフト側をやや外開きにして走風を取り込むと和らぎます。停車中はヒールを少し浮かせ、靴底にたまった熱を逃がす工夫も有効です。焦りを防ぐには「あと何分の遅れか」と具体的に把握し、無理なすり抜けを控える判断材料にしましょう。
ヘルメット内で穏やかなテンポの音楽を流すのもストレス軽減に役立ちますが、クラクションやサイレンを聞き逃さない音量にとどめることが大前提です。渋滞を抜けた直後は視界が一気に開け、加速したくなりますが、一呼吸置いてミラーで後続を確認し、気持ちをリセットしてからスロットルを開ける習慣を持ちましょう。
渋滞は避けがたい現実ですが、適切なテクニックと心構えを整えれば、バイクの弱点を抑えつつ快適な走行を続けられます。
